バズマザーズVo,Gt,担当


by n-g-c-m-w

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ちくわとモンプチ4

ポポロのアジトに通わなくなって数ヵ月。
レコーディングやツアーで何かと忙しくしていたが、やはり心のどこかでいつも彼等の事が気掛かりであった。

季節は巡りすっかり春になった。
彼等は冬を無事に越せたのだろうか。或いは誰か彼等を保護してくれる方が現れて、何処かの炬燵で丸くなっているのだろうか。
そんな事を考え出すと、いてもたってもいられなくなり、ちらっと見に行くだけだからそれはオッケーというルールを無理矢理に追加し、3ヶ月ぶりにポポロのアジトへ行く事にした。

すると、やはりと言うか、見慣れた四十代後半の貴婦人の後ろ姿。
私は恐る恐る半分、照れ臭さ半分みたいな感じで「イトウさん、久しぶりっす」と言うと、こちらをちらりと振り返りイトウさん。

「ぴゅう(口笛)猫王子のご帰還だよぅ」

と、謎の一言。

私との久々の再会で、光栄な事にイトウさんもテンションが上がってしまったのだろう、何でそんなんゆーてもうたんやろ的な顔を露骨にするもんだから、こちらも顔が真っ赤になり、妙な沈黙が流れそうになるのを遮る様に
ふにゃあ、と成猫手前くらいの大きさで眼がまんまるの三毛猫が顔を出して私の足元をしゅんしゅんして来たのである。

「お前、ゆう子か?」恐らく私は泣き笑いと呼ばれる物を初めて体験した気がする。

「そ、私はゆう子。あんた全然来ないから冬を越せずに死んだかと想ってたわ。車のボンネットに入っちゃったりしてさ。」
みたいな感じで私の顔をじーっと見つめるゆう子。
今想えば、誰より空気の読めるゆう子は、私とイトウさんの中に気まずい妙な沈黙が起こりつつあるのを察知して、仲介役を買って出てくれたんじゃないかと想う。

ゆう子は、相変わらず私の手から食事を食べてくれた。胸がいっぱいになった。

嬉しい事にポポロ一族はちゃんと皆生きていてくれた。
もう少し人間を怖がれ、とよく警告してあったポポパパは、その人なつっこさを有効活用し富豪の老夫婦に貰われたらしい。
ポポロのお母さん(ポポママと呼んでいる)は相変わらずの人間嫌いで、イトウさんの据え膳した物以外は食さず、アジトの奥地で今でも人類滅亡計画を練っているそうだ。

そしてポポロもやはり相変わらずで、人前にこそ登場するものの、人の手が届く範囲には決して身を置かず、まんまるの眼で我々を傍観し、優雅にアジトで鎮座している。
ただ、ポポロには革新的な変化が起こっていた。
彼女の周りに3匹の子猫がちょらちょら付き纏っていたのである。

ゆう子と同じ三毛猫で、好奇心旺盛のジョーイと、全身濃いグレー一色で兄弟の中で一番食いしん坊でのんびり屋さんのチャンドラーと、毛色も性格もポポロ生き写しのチビポポの3兄弟が、春を存分にenjoyしていたのである。

私は思わずイトウさんに問う
「これって、ポポロの…?」
「そう。先月産まれたばっかりですよ。」


その時の私といったらもう、正気じゃなかったと想う。
やべ、やっべ、まじやばんですけど?ひゃひゃ、やべ、まじちょーやっべー。と何故か関東のヤンキーみたいな口調で3兄弟にモンプチや、お得意のとぅとぅとぅや、猫じゃらしや、なげやりや、虚無や、繰り返される諸行無常や、等あらゆる手段でコミュニケーションを計ろうとしていた。
その姿を警察官に見られたら、とりあえずしょっぴいとくか、となっていただろう。

もはや子猫は麻薬だ。

私がジョーイ、チャンドラー、チビポポに狂喜乱舞してる間も、ずっとゆう子は私の足元にいてくれた。
本当はお前を一番愛しているよ、ゆう子。


それからまた毎日ポポロ一族に会いに行く様になった。
確かに私は彼等を保護してあげる事は出来ない、だが彼等が今を生きて行く為に必要な栄養を提供する事なら出来るし、いつか彼等を保護してくれる方が現れるまで人間に慣れておく練習も無駄ではないだろうし、もしも彼等が万一の大事になれば獣医師に連れて行く事くらい私にも出来る。
そう自分に言い聞かせ、ツアー中でなければ毎日ポポロ一族に遊んで貰う日々を送っていた。

時折、ポポロの縄張りから少し離れた雑木林で、子猫がミーミー鳴いていた。
ジョーイもチャンドラーもチビポポも揃って私の眼前でちくわと格闘している時も鳴いていた。
ポポロの子猫、もう1匹いるのかな、次会ったらイトウさんに聞いてみよう、と呑気に考えていた。

レオの気持ちも知らずに。
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by n-g-c-m-w | 2013-08-01 12:42