バズマザーズVo,Gt,担当


by n-g-c-m-w

ちくわとモンプチ3

昨年の11月、ポポロがゆう子を含む4匹の子猫を産んだ。

皆、気が触れちまう程に愛らしく、いつもポポロの側でコロコロしていた、らしい。
その頃私は丁度、バンドの遠征中で、長女のゆう子以外とは会った事がない。残念だ。

他の3匹がどうなったかと言うと、心ある近所の方々が引き取って行ったそうだ。

私も知らなかったのだが、野良猫の赤ちゃんが生後1年以上生きられるのは半分だけらしく、残りは飢餓やウィルス等で死んでしまうらしい。
その危険性を想えば、私が彼等に一目も会えなかったからと言ってセンチメンタルになる事なんて、取るに足らない人間のエゴイズムであるのは明白なので、私の知らない空白の1週間の間に起きた出来事を丁寧に教えてくれたイトウさんには、それは良かったっす。みたいな事を曖昧に笑って言った様な記憶が朧気にある。

ゆう子だけが何故誰も保護してくれなかったのか、疑問に想う人もいるであろうから言っておく。
あまりに可愛くないのか、何て早計をする方もおられるかもしれないが、それは違う。
理由はむしろその逆だそうだ。

ゆう子はブチ模様の毛並みの綺麗なあんちくしょうで、眼はポポロと同じまんっっまるで、警戒心の強いポポロ一族の中で、異質な程に人なつっこく、仕草も滑稽で、はっきし言って今まで出会った猫の中でぶっちぎりに可愛い。

イトウさん曰く、ゆう子は可愛すぎるのだそうだ。
他の子猫達もポポロ一族の血統を継いでとても綺麗な顔と毛並みではあったらしいのだが、皆、足が少し悪いとか、自発的に食事が出来ないとか、眼が開かないとか何らかしらのステータス異常を持っていたので、それを不憫に想った方々が保護者として名乗り出てくれたらしいのだが、その方々が異口同音にゆう子に対して
「君は可愛いし、健康だし、人を恐がらないから私が保護しなくても誰かが貰ってくれるよ」
と宣ったそうだ。

自分は常々、共に暮らすなら、可愛くて健康で愛想の良い猫が良いに決まっているだろ。と想っている。
彼等の言動を何度も反芻し、とても恥ずかしい気持ちになった。

が、やはり未だにその考えは変わらない。すいません。


とまぁ、長い前置きになったが、この日から私とゆう子の友情が始まった。心が豊かになり、ゆう子の事で頭がいっぱいになった。

毎日会いに行くのが楽しくて、大家さんに賄賂を手渡してでも一緒に暮らせないものか、とも考えた。
が、我が家は所謂オンボロアパートで、隣人の生活音声は基本的に筒抜け状態。
そこへさして昨年越して来た老夫婦は、純然たる、まじりっけ無しのキチガイで、ちょっとした物音でも立てようもんなら、鬼の形相で怒鳴り込みに来る様な連中だし、何より自分はロックバンドなんてアッパーな稼業をしている旅人なので、ゆう子の面倒を常に見てやれる身分では到底なく、ゆう子に早く安心して暮らせる場所が出来たらいいな、と願う反面で、ずっと俺とあの広場で仲良く遊べたらいいな、とまた人間特有のエゴイズムをテカテカさせてみたり、をぐるぐるしている。

ゆう子は、別に人なつっこい訳ではなく、人間の言葉で言う所の「空気が読める奴」なんじゃないのかな、と想う時がある。

ゆう子はとても頭が良い。人畜生が自分に触れたがっている事なんか理解している。自分の母親であるポポロが、人間に迎合しない性格なのも理解している。
今は、時折私やイトウさんも含め数名が食事を持って来てはいるが、人間が如何に自分勝手で利己的で刹那主義者かも理解している。
だから、ゆう子は自らの身体を人間の近くに起き、我々をエンターテインさせてくれようと懸命に努めているのではないか、と想う時があり、胸が苦しくなった。

その後すぐ、ゆう子は私の手からのみ食事を食べてくれる様になった。
私の膝でのみ昼寝をする様になった。
猫師匠のイトウさんもこれには驚き、『猫使いのヤマダ』なる称号まで頂いた。

けれども私は、ちんけな人畜生の事情でゆう子を引き取ってあげる事が出来ない。
これだけ毎日、彼女を愛でたり遊んだりし続けた結果、ゆう子は私を信用しきっている。餌を持っていなくても私の後を付いて来る。
だが、私は彼女のその無垢な信頼に応えてあげる事が出来ない。
自分の都合で楽しんで、その後の責任を取ってあげる事が出来ない。

ヒト科のメスには何ら抵抗なくやって来た事なのに、私は罪悪感に苛まれ、私はしばらくその広場に行くのを辞めた。
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by n-g-c-m-w | 2013-07-30 20:25